「契約書を公正証書にしたほうがいい」ということを聞いたことがあるかもしれません。
金銭の貸し借りや離婚時の養育費の取り決めなど、重要な契約では公正証書の作成を勧められることがあります。
しかし、具体的にどのようなメリットがあり、費用はいくらかかるのか、手続きはどう進めればいいのでしょうか。
この記事では、契約書を公正証書で作成するメリットと費用の目安、公証役場での手続きの流れを解説します。
この記事のポイント
- 公正証書にすると「強制執行認諾文言」により、裁判なしで強制執行が可能になる
- 公証人が作成するため、文書の真正性が担保され、証拠力が高い
- 費用は契約金額に応じた手数料が発生し、目的価額100万円で5,000円、500万円で11,000円が目安
- 手続きは「原案作成→公証役場への事前相談→必要書類の準備→公証役場での作成→原本の保管」の5ステップ
公正証書とは何か
公正証書とは、公証人(法務大臣から任命された公的な立場の法律専門家)が作成する公文書です。私人間で作成する通常の契約書(私署証書)とは異なり、国が認めた公証人が内容を確認して作成するため、高い証明力を持ちます。
公正証書は全国約300か所の公証役場で作成でき、原本は公証役場で原則20年間保管されます。紛失や改ざんのリスクがなく、長期間にわたって権利関係を証明できる点が大きな特徴です。
契約書を公正証書にする4つのメリット
裁判なしで強制執行ができる
公正証書の最大のメリットは、「強制執行認諾文言」を入れることで、相手が支払いを怠った場合に裁判を経ずに強制執行を申し立てられる点です。
通常の契約書では、相手が約束を守らない場合、まず裁判で勝訴判決を得てから強制執行の手続きに進む必要があります。公正証書があれば、この裁判のステップを省略できるため、時間と費用を大幅に削減できます。
証拠力が高い
公正証書は公証人が当事者の本人確認を行い、内容を読み聞かせたうえで作成します。
そのため、「署名した覚えがない」「内容を理解していなかった」といった言い逃れを防止できます。万が一訴訟になった場合でも、公正証書は私署証書と比べて高い証拠力を持ちます。
原本が公証役場で保管される
公正証書の原本は公証役場で保管されるため、紛失・焼失・改ざんのリスクがありません。
当事者には「正本」または「謄本」が交付されますが、仮にこれらを紛失しても、公証役場で再交付を受けることが可能です。
心理的な抑止力になる
公正証書を作成することで、相手方に対して「約束を守らなければ強制執行される」という心理的なプレッシャーを与えられます。
結果として、契約違反を未然に防ぐ効果が期待できます。
公正証書の作成にかかる費用
公正証書の作成費用は、契約の目的価額(金額)に応じて法令で定められています。
以下は主な金額帯の手数料です。
| 目的価額 | 手数料 |
|---|---|
| 100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 11,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 17,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 23,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 29,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 43,000円 |
上記の手数料に加え、正本・謄本の交付手数料(1枚250円程度)や、公証人の出張が必要な場合は出張費用がかかります。具体的な費用は契約内容によって異なるため、事前に公証役場へ確認することをおすすめします。
公正証書作成の手続き5ステップ
公正証書を作成する際の一般的な流れは以下のとおりです。
ステップ1:契約内容の原案を作成する
まず、契約の当事者で契約書の原案を用意します。
金銭消費貸借契約であれば貸付金額・返済期日・利息・遅延損害金など、必要な条項を整理しておきます。
公証人は内容の適法性を確認しますが、契約条件そのものを考えてくれるわけではないため、当事者間で合意した内容を明確にしておくことが重要です。
ステップ2:公証役場に事前相談する
原案ができたら、最寄りの公証役場に連絡して事前相談の予約を取ります。
原案を持参またはメールで送付し、公証人に内容を確認してもらいます。修正点があればこの段階で指摘を受け、調整を行います。
ステップ3:必要書類を準備する
公証役場から指示された書類を準備します。
必要書類は契約の種類や当事者が個人か法人かによって異なります。
ステップ4:公証役場で公正証書を作成する
予約した日時に当事者全員(または代理人)が公証役場へ出向きます。
公証人が内容を読み聞かせ、当事者が内容を確認したうえで署名・押印します。この場で公正証書が完成し、正本または謄本が交付されます。
ステップ5:原本は公証役場で保管される
作成された公正証書の原本は公証役場で保管されます。当事者が受け取るのは正本(強制執行に使用)または謄本(写し)です。強制執行を行う可能性がある側(債権者)は正本を受け取るのが一般的です。
公正証書作成に必要な書類
以下は一般的な金銭消費貸借契約を公正証書で作成する場合の必要書類です。
契約の種類によって異なるため、必ず公証役場に事前確認してください。
| 書類 | 個人の場合 | 法人の場合 |
|---|---|---|
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 | 代表者の本人確認書類 |
| 印鑑 | 実印 | 会社実印 |
| 印鑑証明書 | 発行後3か月以内のもの | 発行後3か月以内のもの |
| 登記事項証明書 | 不要 | 発行後3か月以内のもの |
| 契約内容の原案 | 必要 | 必要 |
| 代理人の場合 | 委任状・代理人の本人確認書類 | 委任状・代理人の本人確認書類 |
まとめ
契約書を公正証書で作成する最大のメリットは、強制執行認諾文言を入れることで裁判なしに強制執行が可能になる点です。証拠力が高く、原本が公証役場で長期保管されるため、重要な契約では公正証書の作成を検討する価値があります。
費用は目的価額に応じた手数料がかかり、手続きは原案作成から公証役場での作成まで5つのステップで進みます。契約内容によって必要書類や手続きの詳細が異なるため、まずは公証役場への事前相談から始めるとスムーズです。
公正証書にする契約書の原案作成や、手続きの進め方についてご不明な点があれば、行政書士にご相談ください。
【ご注意】
行政書士は、当事者間に法的紛争が生じている場合の交渉・代理および裁判手続きの代理は、弁護士法第72条(非弁行為の禁止)により行うことができません。すでにトラブルが生じている場合は、弁護士へご相談ください。
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