海外の取引先と契約を結ぶとき、国際契約では、言語の選択や準拠法(契約に適用される法律)の設定を誤ると、いざというときに契約内容が想定どおりに機能しないリスクがあります。
この記事では、海外取引の契約書を作成する際に特に押さえておくべき言語選択のルール、準拠法の決め方、紛争解決条項の設計について解説します。
この記事のポイント
- 国際契約では「正文」となる言語を明確に定めないと、解釈の食い違いが生じる
- 準拠法を定めていない場合、相手国の法律が適用される可能性がある
- 紛争解決の方法(裁判・仲裁・調停)は契約締結前に合意しておく必要がある
国際契約における言語選択の重要性
海外取引の契約書では、複数の言語で契約書を作成するケースが多くあります。
たとえば、日本企業と中国企業の取引では日本語版と中国語版、または英語版を併用することがあります。
ここで重要なのは、「正文」(法的に優先される言語版)をどちらにするかを契約書内で明確に定めることです。正文の指定がないまま複数言語の契約書を作成すると、各言語版の間で解釈が異なった場合に、どちらの内容が正しいのか判断できなくなります。
言語選択で起こりうるトラブル例
| 状況 | リスク |
|---|---|
| 正文の指定がない | 紛争時にどちらの言語版を優先するかで争いになる |
| 翻訳の精度が低い | 原文と翻訳版で意味が異なり、相手方と認識のずれが生じる |
| 専門用語の訳語が統一されていない | 契約条件の解釈が当事者間で異なる |
このようなリスクを避けるため、契約書には「本契約は日本語版と英語版で作成し、両者の間に齟齬がある場合は日本語版を正文とする」といった条項を設けることが一般的です。
準拠法を決めないと何が起こるか
準拠法とは、契約の解釈や効力を判断する際に適用される法律のことです。国際契約では、当事者が異なる国に所在するため、どの国の法律を適用するかを事前に決めておく必要があります。
準拠法を定めていない場合、紛争が発生したときに裁判所や仲裁機関が適用する法律を独自に判断することになります。その結果、相手国の法律が適用され、想定していた権利保護が受けられない可能性があります。
準拠法選択のポイント
準拠法をどの国にするかは、交渉力のバランスや取引内容によって異なります。以下の観点から検討することが重要です。
| 検討項目 | 内容 |
|---|---|
| 自社にとって有利な法制度か | 契約違反時の損害賠償範囲や免責条項の有効性は国によって異なる |
| 相手国の法律の内容を把握しているか | 準拠法とする国の法律について専門家の助言を得られるか |
| 中立国の法律を選ぶ選択肢 | シンガポール法や英国法など、国際取引で広く使われる法律を選ぶ場合もある |
準拠法の選択は契約交渉の重要な要素であり、安易に相手方の提案を受け入れると不利な条件になることがあります。
紛争解決条項の設計方法
国際契約では、トラブルが発生した場合の解決方法を事前に定めておくことが欠かせません。紛争解決の方法は大きく分けて「裁判」「仲裁」「調停」の3つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。
| 解決方法 | 特徴 | 注意点 |
|---|---|---|
| 裁判 | 国の司法機関による判断 | 外国判決の執行が認められない国がある |
| 仲裁 | 当事者が選んだ仲裁機関による判断 | 仲裁判断は多くの国で執行可能(ニューヨーク条約加盟国) |
| 調停 | 第三者の仲介による話し合い解決 | 法的拘束力がなく、合意に至らない場合は別の手段が必要 |
海外取引では、仲裁を選択するケースが多い傾向にあります。
これは、日本の裁判所で勝訴しても、相手国でその判決を執行できない場合があるためです。
一方、仲裁判断はニューヨーク条約に加盟している170か国以上で執行が認められています。
仲裁を選ぶ場合は、仲裁機関(日本商事仲裁協会、国際商業会議所など)、仲裁地、仲裁言語を契約書に明記する必要があります。
国際契約書作成時のチェックリスト
海外取引の契約書を作成・確認する際は、以下の項目を確認してください。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 正文の言語 | どの言語版を法的に優先するか明記されているか |
| 翻訳の正確性 | 専門用語や法律用語が正確に翻訳されているか |
| 準拠法 | どの国の法律を適用するか明記されているか |
| 紛争解決条項 | 裁判・仲裁・調停のいずれを選択するか明記されているか |
| 仲裁の詳細 | 仲裁機関、仲裁地、仲裁言語が指定されているか |
| 管轄裁判所 | 裁判を選ぶ場合、どの国の裁判所を管轄とするか明記されているか |
| 契約当事者の表記 | 会社名、所在地、代表者名が正確に記載されているか |
これらの項目が曖昧なまま契約を締結すると、トラブル発生時に想定外の不利益を被る可能性があります。
まとめ
海外取引の契約書では、言語選択、準拠法、紛争解決条項の3つが特に重要です。正文となる言語を明確にしないと解釈の争いが生じ、準拠法を定めないと相手国の法律が適用されるリスクがあります。また、紛争解決の方法として仲裁を選ぶ場合は、仲裁機関や仲裁地の指定が必要です。
国際契約は国内取引以上に複雑な要素が絡むため、契約書の作成段階で専門家に相談することで、将来のリスクを軽減できます。アーチ行政書士事務所では、海外取引に関する契約書の作成・確認についてのご相談を承っております。
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