新規取引や業務提携の話が進み、相手先から秘密保持契約書(NDA)の締結を求められた。
しかし、相手が用意した契約書をそのまま使っていいのでしょうか。
また、自社で契約書を作成する必要があるものの、何を書けばいいのかわからないということはないでしょうか。
秘密保持契約書は、単に「秘密を守ります」と約束するだけの書類ではありません。どの情報を秘密とするか、いつまで守るか、違反したらどうなるかといった具体的なルールを定めることで、初めて自社の情報を守る効果を発揮します。
この記事では、秘密保持契約書の作り方として、自社の情報を守るために盛り込んでおきたい7つの重要条項を解説します。
この記事のポイント
- 秘密情報の定義を曖昧にすると、重要な情報が保護対象から外れるリスクがある
- 秘密保持義務の内容、有効期間、例外規定の3つは特に慎重な検討が必要
- 損害賠償条項と契約終了後の義務も忘れずに規定する
- 相手が用意したひな形は、自社に不利な条項がないか十分に確認する
秘密保持契約書(NDA)に盛り込みたい7つの条項
秘密保持契約書の作り方において、以下の7つの条項は自社の情報を守るために欠かせない要素です。それぞれの条項について、何を定めるべきか、どのような点に注意すべきかを解説します。
| 条項 | 主な内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| ①秘密情報の定義 | 何を秘密情報とするか | 範囲が広すぎても狭すぎても問題 |
| ②秘密保持義務の内容 | どのように管理・使用するか | 第三者への開示制限を明確に |
| ③例外規定 | 秘密情報に該当しない情報 | 相手方の例外が広すぎないか確認 |
| ④有効期間 | 契約の存続期間 | 情報の性質に応じた期間設定 |
| ⑤契約終了後の義務 | 情報の返還・廃棄 | 複製物の取扱いも規定 |
| ⑥損害賠償 | 違反時の責任 | 立証責任の所在を確認 |
| ⑦管轄裁判所 | 紛争時の裁判所 | 自社に近い裁判所が有利 |
①秘密情報の定義
秘密情報の定義は、NDA全体の効力を左右する最も重要な条項です。ここで定義された情報だけが契約による保護を受けるため、範囲の設定には細心の注意が必要です。
定義の方法には、「秘密」と明示した情報のみを対象とする方式と、開示した情報全般を対象とする方式があります。前者は管理の手間が増えますが保護範囲が明確になり、後者は幅広く保護できる一方で相手方の負担が重くなります。取引の内容や関係性に応じて適切な方式を選択してください。
②秘密保持義務の内容
秘密保持義務では、情報を受け取った側が何をしてはいけないのかを具体的に定めます。一般的には、第三者への開示禁止、目的外使用の禁止、善良な管理者の注意義務(一般的に期待される程度の注意を払って管理する義務)による管理などが規定されます。
特に重要なのは、情報を開示できる範囲の限定です。相手方の従業員や関連会社への開示を認める場合でも、その範囲を「業務上必要な者に限る」などと制限することで、情報拡散のリスクを抑えられます。
③例外規定
例外規定は、秘密保持義務の対象外となる情報を定める条項です。通常、開示時点で既に公知だった情報、受領者が既に保有していた情報、第三者から正当に入手した情報、独自に開発した情報などが例外とされます。
情報を開示する側としては、この例外規定が広すぎると保護が弱まるため注意が必要です。相手方が用意した契約書では、例外の範囲が不当に広くなっていないか確認してください。
④有効期間
有効期間は、秘密保持義務がいつまで続くかを定めます。契約期間中だけでなく、契約終了後も一定期間は義務が継続する旨を明記することが重要です。
一般的には契約終了後2〜5年程度とされることが多いですが、情報の性質によって適切な期間は異なります。技術情報のように長期間価値を保つ情報であれば、より長い期間を設定することも検討してください。
⑤契約終了後の義務
契約が終了した際に、開示した秘密情報をどう取り扱うかを定めます。具体的には、情報の返還または廃棄、複製物の取扱い、廃棄した場合の証明書の提出などを規定します。
デジタルデータの場合、完全な消去が技術的に困難なケースもあります。そのため、消去の方法や確認手段についても事前に合意しておくことが望ましいでしょう。
⑥損害賠償
契約違反があった場合の損害賠償について定めます。秘密情報の漏洩による損害は金額の算定が難しいため、違約金の定め(損害賠償額の予定)を置くことも一つの方法です。
ただし、違約金の額が不当に低いと抑止力にならず、高すぎると相手方が契約を躊躇する原因にもなります。取引の規模や開示する情報の重要性に応じたバランスの取れた設定が求められます。
⑦管轄裁判所
紛争が生じた場合にどの裁判所で解決するかを定めます。自社の本店所在地を管轄する裁判所を指定できれば、万が一の紛争時に地理的・経済的な負担を軽減できます。
NDA締結前のチェックリスト
秘密保持契約書を締結する前に、以下の項目を確認してください。特に相手方が用意した契約書を使用する場合は、自社に不利な条項がないか入念なチェックが必要です。
| 確認項目 | チェック内容 |
|---|---|
| 秘密情報の範囲 | □ 自社が開示する情報が保護対象に含まれているか |
| 義務の双方向性 | □ 自社だけが一方的に義務を負う契約になっていないか |
| 例外規定 | □ 例外の範囲が広すぎて保護が弱まっていないか |
| 有効期間 | □ 情報の重要性に見合った期間が設定されているか |
| 第三者開示 | □ 相手方が情報を開示できる範囲が適切に制限されているか |
| 損害賠償 | □ 違反時の責任が明確に定められているか |
| 管轄裁判所 | □ 自社にとって不利な場所が指定されていないか |
相手方のひな形を使う場合の注意点
取引先から提示されたNDAをそのまま使用するケースは多いですが、その内容は相手方に有利に作成されていることがほとんどです。
私自身、以前営業対応をしていた際、相手先が数十人規模の会社であれば「うちのNDAを使ってほしい。問題があれば直すから。」と初手を打たれることがほとんどでした。売り手の立場上の問題もありますが、だからといって「そちらのNDAに従いますよー」などと易々と言ってはいけません。
特に注意すべきなのは、義務を負う当事者が片務的(一方のみ)になっている場合です。
自社が情報を開示する立場であれば、相手方にも同等の秘密保持義務を課す双務契約への修正を検討してください。
また、「開示者の書面による事前承諾なく第三者に開示してはならない」という条項があっても、相手方の従業員や弁護士等への開示が例外とされていることがあります。この例外の範囲が適切かどうかも確認が必要です。
まとめ
秘密保持契約書(NDA)で自社の情報を守るためには、7つの重要条項を適切に定めることが大切です。特に秘密情報の定義、秘密保持義務の内容、有効期間の3つは契約の実効性を大きく左右します。
相手方が用意したひな形を使用する場合でも、自社に不利な条項がないか十分に確認してください。
契約内容に不安がある場合や、自社でNDAを作成する必要がある場合は、行政書士などの専門家に相談することで、より適切な情報保護につなげることができます。
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