「自分が亡くなった後、財産はどうなるのだろう」
「特定の人に遺したいものがあるけれど、方法がわからない」
おひとりさまで終活を考え始めたとき、こうした不安を感じる方は少なくありません。
配偶者も子どももいない場合、法律のルール(法定相続)に従うと、財産は親や兄弟姉妹へ渡ることになります。しかし、「お世話になった友人に遺したい」「好きな団体に寄付したい」「兄弟には渡したくない」という気持ちがある場合、何も準備しなければその希望はかないません。
この記事では、おひとりさまが終活として遺言書を活用する方法について、
書き方の基本と注意点を解説します。
この記事のポイント
- おひとりさまが何も準備しないと、財産は法律のルール通りに相続される
- 遺言書があれば、法定相続人(法律で定められた相続人)以外の人や団体にも財産を遺せる
- 遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がある
- 形式ミスや内容の不備があると遺言書が無効になるリスクがある
- 遺言執行者(遺言の内容を実行する人)を指定しておくとスムーズに手続きが進む
おひとりさまが遺言書を準備すべき理由
独身で子どもがいない場合、法定相続人(法律で定められた相続人)の範囲は状況によって変わります。親が存命であれば親が、親が亡くなっていれば兄弟姉妹(または甥・姪)が相続人となります。
つまり、遺言書がない状態では、長年疎遠だった兄弟や、ほとんど面識のない甥・姪が財産を受け取ることになりかねません。一方で、長年支えてくれたパートナーや友人、信頼できる人に財産を渡すことは、遺言書なしでは原則としてできないのです。
また、法定相続人が誰もいないケースでは、財産は最終的に国庫(国)に帰属します。「それでもかまわない」という方もいるかもしれませんが、「お世話になった人に少しでも遺したい」という気持ちがあるなら、遺言書の準備は終活の中でも最優先で取り組むべき課題です。
遺言書の種類と選び方
遺言書には複数の種類がありますが、おひとりさまの終活でよく活用されるのは次の2種類です。それぞれの特徴を比較して、自分に合った方法を選びましょう。
| 種類 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 |
|---|---|---|
| 作成方法 | 自分で手書きして作成 | 公証役場で公証人が作成 |
| 費用 | 保管費用3,900円(法務局保管の場合) | 財産額により異なる(数万円〜) |
| 証人 | 不要(保管申請時は本人のみ) | 2名必要 |
| 紛失・偽造リスク | 自宅保管の場合はリスクあり | 原本を公証役場が保管するためリスク低 |
| 無効リスク | 形式ミスで無効になる可能性あり | 公証人が確認するため低い |
| 検認(家庭裁判所での確認手続き) | 法務局保管以外は必要 | 不要 |
費用を抑えたい場合は自筆証書遺言、確実性を重視する場合は公正証書遺言が向いています。
ただし、おひとりさまの場合は遺言書が発見されない・開封されないといったリスクも考えられるため、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を活用するか、公正証書遺言を選ぶことを検討することをお勧めします。
遺言書に書けること・書くべきこと
遺言書には、法律的な効力を持つ内容(「遺言事項」)と、法的効力はないものの意思を伝えられる内容があります。おひとりさまの終活において、特に重要な記載事項を以下で確認しましょう。
① 財産の分け方(遺産分割方法の指定)
「預貯金〇〇円を友人の△△に遺贈(遺言による贈与)する」「自宅不動産を甥の□□に相続させる」といった形で、誰に何を遺すかを具体的に記載します。受け取る人の氏名・生年月日・住所など、特定できる情報を明記することが重要です。
② 遺言執行者の指定
遺言執行者(遺言の内容を実際に実行する役割を担う人)を指定しておくと、相続手続きが円滑に進みます。おひとりさまの場合、相続人が手続きを進めにくいケースもあるため、信頼できる人や専門家を遺言執行者として指定しておくことが特に重要です。
③ 付言事項(気持ちを伝えるメッセージ)
付言事項とは、法的効力はないものの、遺言書の最後に自分の気持ちや感謝の言葉を書き添えられる部分です。「長年支えてくれてありがとう」「この財産を大切に使ってほしい」といったメッセージは、残された人への大切な言葉になります。
自筆証書遺言を書くときの注意点
自筆証書遺言は、民法(相続に関する法律)で定められた形式を守らなければ無効になります。よくあるミスを確認しておきましょう。
| 項目 | ルール |
|---|---|
| 本文 | 全文を自筆(手書き)で書く(財産目録のみパソコン可・要署名押印) |
| 日付 | 作成した年月日を正確に記載する(「吉日」はNG) |
| 署名 | 遺言者本人が自署する |
| 押印 | 認印でも可だが、実印が望ましい |
| 訂正方法 | 民法所定の方法(訂正箇所に押印・余白に訂正内容を記載等)に従う |
特に注意が必要なのが日付と訂正方法です。日付が曖昧だったり、訂正の方法が誤っていたりすると、遺言書全体が無効と判断されるケースもあります。作成後は専門家に内容を確認してもらうと安心です。
遺言書だけでは解決できないこと:死後事務委任契約との組み合わせ
おひとりさまの終活で遺言書と合わせて検討したいのが、「死後事務委任契約(亡くなった後の実務的な手続きを第三者に依頼する契約)」です。
遺言書で定められるのは、あくまでも財産の行方です。
葬儀の手配・病院や施設への支払い・家財の処分・各種サービスの解約といった「死後の実務手続き」は、遺言書の効力が及ばない範囲です。
おひとりさまの場合、こうした手続きを担ってくれる家族がいないことが多いため、信頼できる人や専門家との間で生前に死後事務委任契約を結んでおくことで、希望通りの対応が実現しやすくなります。遺言書と死後事務委任契約をセットで準備することが、おひとりさまの終活における一つの大きな柱といえます。
まとめ
おひとりさまの終活において、遺言書は「自分の意思を法的に残すための唯一の手段」です。何も準備しなければ、疎遠な親族に財産が渡ったり、お世話になった人に何も遺せなかったりする可能性があります。
遺言書を作成する際は、種類の選択・形式の遵守・遺言執行者の指定・死後事務委任契約との組み合わせという4つの観点を意識することで、より実効性の高い終活の準備が整います。
「自分の場合はどう書けばいいのか」「内容に不備がないか確認したい」といった疑問がある場合は、行政書士に相談することで、個別の状況に応じたアドバイスを受けることができます。一人で抱え込まず、専門家を気軽に頼ってみてください。
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