取引先から契約書を提示されたとき、損害賠償の条項を見て不安を感じたことはないでしょうか。
損害賠償の上限設定と免責条項は、万が一のトラブル時に自社が負うリスクを大きく左右します。
この記事では、契約書における損害賠償上限の設定方法と免責条項を定める際の注意点について解説します。
この記事のポイント
- 損害賠償の上限は「契約金額」や「一定金額」で設定するのが一般的
- 故意・重過失による損害は上限設定が無効となる可能性が高い
- 免責条項は消費者契約法や公序良俗に反すると無効になる
- 間接損害・逸失利益の取り扱いを明確にしておくことが重要
損害賠償の上限設定が必要な理由
契約書に損害賠償の上限を設けない場合、契約違反や過失によって相手方に損害を与えたとき、その全額を賠償する義務が生じます。損害額が予測できない取引では、一度のミスで事業継続が困難になるほどの負担を負う可能性があります。
損害賠償の上限を設定することで、予測可能なリスクの範囲内でビジネスを行うことができます。特にシステム開発やコンサルティングなど、成果物の価値と発生しうる損害額の差が大きい業務では、上限設定が欠かせません。
上限金額の設定パターン
損害賠償の上限は、取引の内容や当事者の関係性によって様々なパターンがあります。一般的な設定方法を表にまとめました。
| 設定パターン | 具体例 | 適している取引 |
|---|---|---|
| 契約金額を上限とする | 「損害賠償額は本契約に基づく報酬額を上限とする」 | 業務委託、システム開発 |
| 一定金額を上限とする | 「損害賠償額は100万円を上限とする」 | 定額サービス、継続取引 |
| 直近の取引額を上限とする | 「過去12ヶ月の取引総額を上限とする」 | 継続的な売買取引 |
| 保険金額を上限とする | 「賠償責任保険の補償範囲を上限とする」 | 高リスクの業務 |
損害賠償の上限が無効になるケース
前述のように損害賠償の上限を設定しても、すべての場合に適用されるわけではありません。
故意または重大な過失によって損害を発生させた場合、上限条項が無効と判断される可能性があります。
これは民法の信義則(契約当事者は誠実に行動すべきという原則)に基づく考え方です。
例えば、相手に損害を与えようとわざとデータを消去した場合や、通常は考えられない大きな作業のミスがある場合では、、上限を超えて賠償責任を負うことがある、ということです。
そのため、契約書には「故意または重過失の場合を除く」という但し書きを入れるのが一般的です。
間接損害と逸失利益の扱い
損害賠償額の範囲には、以下の2つがあります。
・間接損害・・・間接的に発生した損害
・逸失利益・・・得られるはずだった利益
この取り扱いを明確にしておく必要があります。これらは金額が大きくなりやすく、範囲も曖昧になりがちなためです。
「間接損害、特別損害、逸失利益については賠償責任を負わない」と定める契約書もありますが、この場合も故意・重過失のケースでは適用が制限される可能性があります。
免責条項を定める際の注意点
免責条項(一定の事由について責任を負わないと定める条項)は、リスク管理の有効な手段ですが、設定方法を誤ると無効になることがあります。
消費者との契約における制限
事業者と消費者の間の契約には消費者契約法が適用されます。消費者契約法では、事業者の損害賠償責任を全部免除する条項は無効とされています。また、故意または重過失による損害賠償責任の一部を免除する条項も無効です。
BtoB取引(事業者間取引)では消費者契約法の適用はありませんが、公序良俗(社会の基本的な秩序や道徳)に反する条項は民法90条により無効となる可能性があります。
有効な免責条項のポイント
免責条項を有効に機能させるためには、以下の点に注意が必要です。
| 注意点 | 具体的な対応 |
|---|---|
| 免責の範囲を明確にする | 「天災地変、通信回線の障害等、当社の責めに帰すことができない事由による損害」など具体的に記載 |
| 一方的に有利な内容を避ける | 双方の免責事由を対等に設定する |
| 故意・重過失を除外する | 「ただし、当社の故意または重過失による場合を除く」と明記 |
| 損害軽減義務を定める | 損害が発生した場合の通知義務や軽減措置を規定 |
契約書作成時のチェックリスト
損害賠償条項と免責条項を作成・確認する際には、以下の項目をチェックしてください。
| 確認 | 項目 |
|---|---|
| □ | 損害賠償の上限金額は取引内容に照らして妥当か |
| □ | 故意・重過失の場合の除外規定があるか |
| □ | 間接損害・逸失利益の扱いが明確か |
| □ | 免責条項の範囲が具体的に記載されているか |
| □ | 消費者契約に該当する場合、消費者契約法に抵触しないか |
| □ | 損害発生時の通知義務が定められているか |
| □ | 請求期限(時効に関する定め)が設定されているか |
まとめ
契約書における損害賠償の上限設定と免責条項は、ビジネスリスクを適切に管理するために欠かせない要素です。
上限金額は契約金額や取引内容に応じて設定し、故意・重過失の場合は上限が適用されない可能性があることを理解しておく必要があります。
免責条項は、消費者契約法や公序良俗に反しない範囲で、免責事由を具体的に明記することが重要です。取引の内容や相手方との関係性によって適切な条項は異なるため、個別の状況に応じた検討が求められます。
損害賠償条項や免責条項の設定でお困りの場合は、ぜひ行政書士にご相談ください。
【ご注意】
行政書士は、当事者間に法的紛争が生じている場合の交渉・代理および裁判手続きの代理は、弁護士法第72条(非弁行為の禁止)により行うことができません。すでにトラブルが生じている場合は、弁護士へご相談ください。
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